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愛知県芸術文化センター 第9回 N響楽員による公開レッスン

 

N響トロンボーン奏者栗田雅勝先生による公開レッスン

2016年11月27日(日) 14:00~17:00 愛知県芸術劇場大リハーサル室

 

1)中学校 2年生 トロンボーン演奏歴 1年半
  サン=サーンス作曲 「ロマンス」

2)中学校 2年生 トロンボーン演奏歴 5年
  G.ガブリエーリ作曲 「Sonata pian’ e forte」

3)中学校 2年生 トロンボーン演奏歴 5年
  内藤淳一作曲 「式典のための行進曲『栄光をたたえて』」

4)中学校 2年生 トロンボーン演奏歴 1年半
  C.ドビュッシー作曲 「亜麻色の髪の乙女」

5)中学校 2年生 トロンボーン演奏歴 1年半
  L.グレンダール作曲 「CONCERT pour Trombone et Piano」より第一楽章

6)高校 1年生 トロンボーン演奏歴 7年
  R.ジェーガー作曲 「Sinfonia Nobilissima」

7)音大 1年生 トロンボーン演奏歴 9年
  E.ザクセ作曲 「CONCERTINO in B major」

8)暁中学校 1、2年生(金管八重奏)
  高橋宏樹作曲 「せきれいの尾」

 昨日東京でバボラク氏のコンサートを聴き、その流れでY嬢(バボラクその4参照)と聴講することになりました。交通事情もあって会場入りしたときには、すでに3人目のレッスンの最中でした。
 そしてそのレッスンを受けている中学生の音がとても良くて、中学2年生でこれはスゴイ!と思いました(後で確認したら演奏歴が5年でしたので納得)。
 その次も中学2年生で、用意してきた曲は演奏せず、発音、音の立ち上がりや、高い音へのアプローチなどへの指導を受けるのが主でした。例えばドーミーソーと出すとソが出ないとき、ドレミファソと出せば出る、ならばそれを交互にやると、どちらのパターンでもソが出せるようになる、というような実践的なもので、受講者も手応えがあったのではないかと思います。
 前半の生徒は曲より基本練習を見てもらいたがったとのことで、その次の生徒は暗い音を明るくしたい、というような趣旨で指導を受けていました。
 前半の最後はグレンダールの協奏曲!しかも経験1年半。これは大したものだと思いました。先生も感心していて、どんな人に指導者受けたか聞くと、吹奏学部の顧問がTb吹きということでした。それにしても今後が楽しみな生徒でした。

 

 休憩をはさんで後半は高校生のバストロから。シンフォニア・ノビリッシマの一節を中心にテンポ感や音程についての基礎的な指導。栗田先生は苦も無くテナーで模範演奏。F管があるとはいえやはり流石です。

 そして、高校生,大学生続きましたが、ある意味と安心して聞けました。とにかく最初に聞いた中学1年生の音があまりに良かったので、レベルの高い人を選りすぐったのか、と思ってしまいましたが、そうでなかったので逆にホッとしたのです。ちょっと失礼な言い方になってしまいましたが、決して他意はありません。当たり前ですが、様々なレベルの人は居るのがあたりまえで、それに応じてどのように指導されるかも興味の一つだったのは正直なところです。

 金管アンサンブル。tpトップ立派でした。私の好みではないがホルンのトップもよく頑張っていました(上から目線ですみません)。生徒自身が言っていましたが、バランスと音程が大切で、この当たり前のことが難しい。残念ながら学年を超えた中学生の団体では個々の技量の差が大きいのは仕方がなく、バランスをとるのは至難でしょう。先生も、バランスに関してはこのパートはもう少し大きく、とかの指摘にとどめていました。音程についてはユニゾンと和音でそれぞれ時間をとって、あっている状態を体感させようという指導でしたが、生徒本人があがっているのか、ちょっと呑み込めてなさそうだったのが残念。

 

<全体を通して何度か出てきたアドバイスなど>
・のどをあける、実は難しい。かえって緊張してしまう。のどを開けようと意識するより、自然な状態を保つ、と心がけた方が良い結果につながることが多いだろう。
・オペラ歌手などは色々な格好で歌を歌うが、胸より上の形はしっかり出来ていて、安定した発声ができるようにしている。見習うべきであろう。
・シラブルはとても大切 「い」「う」「お」のかたちで、低い音の方が広がる。

・音の出だしはとても大切。出だしで音色のかなりの部分が決まる。(これは、実際に音の出だしをカットして聞かせると何の楽器かわからなくなるという実験結果有ります)

・前提として楽しくやろう、面白くなくなったらやめてしまうから。
・メトロノームでインテンポを確認しながら練習するのは大事。誰でも癖がある。わかったうえで練習する。
・少しでも良いから毎日やろう。
・大きい音を要求されてもがなってはダメ。いい音でなければ聴く方は心地よくない。指揮者がよくあおるような身振りをしてそれがかっこよいような感じがするようだが、演奏する側がそれに乗って汚い音を出したら音楽でなくなる。

 総じて栗田先生は、相手に合わせて柔軟な指導をしておられ、どの生徒もそれぞれ得られるところがあっただろうと思います。
 平均して若い人の方が指導によく反応してその場で変化していたように感じました。
 音大生の方に至っては、最も大切な「うたう」ことについては気持ちが入っていて良かったと思いますが、先生の指摘通り、基本的なリズムが崩れてしまうのはコンクール等で致命的なのでは、とよけいな心配をしてしまいました。

<指導後、聴講者も交えての質疑時間がありました。以下抜粋。>

・バジングによるウォームアップの是非についての質問。
無難と言えば無難だが、人それぞれに合ったやりかたをみつけよう、とくにおしつけないという回答。
例に挙げたリップでもマウスピースでもバジングで音程をきちんとつくるやり方は、まさにトム・スティーブンス氏のことだし、呼吸の道具を使って、というのはMr.ジェイクのことかな、と思ったり。

<指導中のよもやま話>

・面白かったのが、F管を使って、7ポジションでB♭を出すのは、楽かもしれないがN.G.というくだり。
指導した先生もその場にいて、ポジション移動すると、前の音と距離ができてしまうので、F管を使った方が自然につながると考えた、と説明すると、実演で吹き比べ、明らかに音色に差が出るので、特に若い時は楽をせず正攻法で練習して欲しい
というのが栗田先生の主張でした。そしてサンサーンスのオルガンの一節でこのポジションを使ってコラールを吹くがそれがほとんど唯一、とおしゃっていた。実に興味深いお話でした。


<余談>
昨日、超人バボラク氏を今日の奏者とほぼ同じ距離で聴いたため、改めて氏のすごさを思い知ることにもなりました。楽器の演奏は本来とても難しくて、強くタンギングすれば音が汚くなるし、高い音は力んでしまうし、油断すればひっくり返るのが当たり前ですが、そうではない空間があったなー、と。

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