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有川 浩
阪急電車 ★★★★★ 20130813
たいへん面白かった。駅名に沿って往きと、半年後の還りで複数のストーリーが絡まって進んでいきます。どれも心温まる良い感じです。
映画化もされており、DVDで見てみました。映画もまずまず面白かったのですが、わずかにズレた演出のハイライト・シーンと、復路で老婦人がひとりでおばちゃん連中をやり込めてしまったのは、原作の味を期待した自分には少々残念でした。といいながら、何度か見てしまいました。
図書館戦争 シリーズ1 ★★★★ 20130303
映画化もされた話題作のシリーズ1作目。なんとなく自分には合わないような気がしていましたが、なかなか面白かったです。ちょっと無理のある設定とは感じますが、ぎりぎりセーフか。実写にしたらアウトだろうなー。
実は作者名を“ありかわひろし”と呼んで、男性だとばかり思っていました(恥)。
荻原 浩
愛しの座敷わらし ★★★★ 20130810
心温まる物語でした。左遷で田舎の古民家に引っ越した家族。そこには座敷わらしが居たわけですが、座敷わらし自体は特に何かするわけでなく、その存在が登場人物たちに影響を及ぼしていきます。その過程がとても○に描かれています。
エンド点も満足です。こうでなくては。
オイアウエ漂流記 ★★★★★ 20120905
表題どおり、無人島でのサバイバル生活が中心の漂流記もの。荻原先生の手によるものだけあって、それぞれの登場人物がその立ち位置で、個性に合わせて活躍するのが心地よいです。
必要に迫られて木登りをするヒロインが、主人公に「パンツは見るなよ」と言います。なんだかこのセリフが印象に残ってしまいました(笑)。
押入れのちよ ★★★★ 110209
全9編からなる短編集。幽霊の話が集まっていますが、意外といけると思いました。ただし、仕掛けは分かっているので、話の落ち着き先はどうしても見えてしまいます。なので、導入の1作がもっとも気持ちが入ったかな。
表題作は私の好きなパターンなので、これはシリーズ化してほしいです。。。
あの日にドライブ ★★★★ 20100912
結局誰もが夢想することなのでしょうね。あの時ああしていたら、今頃どうなっていたか。。。
少しだけ広げた話をフォローする場面もありますが、いろいろなことに決着はつけず、読者に委ねる形で終わっています。ちょっと物足りないかな。
僕たちの戦争 ★★★★★ 2009.10.22
推理小説ではありませんが、タイムスリップものとして、面白く読めました。話の展開も頑張っていて、登場人物の絡め方も期待を裏切らないと思います。クライマックスの盛り上げもとても良いです。
でも、、、結末はこれもひとつの手かもしれませんが、せめてエピローグを追加して、もう少しほのめかすような描写が欲しかったです。骨格は使い尽くされたプロットなのかもしれませんが、話の肉付けによって○になる見本のような感じがしました。
ママの狙撃銃 ★★★★★ 2009.8.8
「明日の記憶」の印象が強くて、どうしても期待してしまいますが、この物語のエンドもやはりちょっと物足りない。・・・と思ったのですが、万が一にもシリーズになれば、と考え直して★×5
たいへん面白い。娘の同級生を脅すところはちょっと違う気がしますが、ラストシーンに至るまでは、“読み出したら止まらない”。題名から勝手に狙撃に重きを置いたアクション小説か?と思ったのですが、さすが荻原先生、読ませてくれました。しかし、このまま行けば、結末は、、、さて、どう受け止める人が多いだろうか。
誘拐ラプソディー
★★★
2009.5.3
これはもうひとつだったかな。ダメ人間が誘拐で一発当てようとするが、ヤクザや中国人マフィアまでが絡んできて、、、ありがちな設定で、荻原先生ならでは、と読ませるところが少ない感じでした。
ギャグ調のなかにもほろりと、というところは基本的に同じですが、そのほろりがちょっとあざとい感じが、、、やはり続けて同先生の作品を読み過ぎて、私の感受性がマヒしたか
コールドゲーム
★★★★★
2009.3.22
「北中防衛隊」。中学校時代のクラスメートが次々と襲われ、有志で結成したグループ。まるでホラーのような展開ながら、ミステリとしてちゃんと筋書きがあります。とにかく、不可解な出来事にぐいぐいひきこまれ、ページをめくるのが止まりませんでした。
種明かしには賛同できない人も多いように思います。私も明かされた最初はちょっとそう感じました。でも、ホラーで締めくくるぐらいなら、この方が良いです。
ハードボイルド・エッグ
★★★★
2009.2.15
ハッキリ言ってコメディです。でも、ハードボイルドを期待して読んでも、それなりに楽しめる作品でした。裏表紙に読むときの注意として、1. 笑いじわに気をつける 2. 泣けるから人前で読まない と書いてあります。残念ながら泣けませんでしたが、オチは違う形で用意して欲しかったなー。
この主人公で連作できると思いますが、そういうのは、どっかで読んだような気が。。。
噂
★★★★★
2009.3.29
サイコ・サスペンス。「レインマンが女の子の足首を切る」という都市伝説。その噂が現実に、、、と書いてしまうと、ありきたりのホラーか量産作家の推理小説みたいですが、例によって魅力的に彫り込まれる登場人物像と、すんなりのめり込める背景の構築が、中身の濃い話を読ませてくれます。
主人公はもちろん感情移入できるのですが、その横にいる名島警部補がいいです。ただ、最後のオチはやりすぎだと、、思いたい(笑)。
メリーゴーランド
★★★★
2009.4.8
ちょっと「県庁の星」というコミック(映画や小説のコミカライズ)を思い出してしまいました。別に話が似ているわけではないのですが。。。
ここでも、「神様からの~」の篠崎にあたる(?)来宮先輩がまた実に良い味をだしてます。この人物配置に加え、「明日の記憶」ほど怖く重い話ではないので、安心して読めました。この作品で萩原先生の人物描写がやみつきになってしまったようです。
神様からひとこと
★★★★
2009.3.21
これはもう推理小説とかミステリではありませんが、しっかり構築されたコメディとしては最上の部類ではないでしょうか。奇跡の一発逆転やアメリカンドリーム的な成功譚ではないのですが、読後はなかなかよい気分です。
脇を固めるキャラクタの中でも、篠崎という人物はたいへんよい味を出してます。直後でなく数年後の後日談を書いたらもの凄く面白くなりそうだと思ったのは自分だけか?
明日の記憶
★★★★★★
2009.4.4
ハッピーエンドが全く望めないストーリーなのに、物語にすっかり入り込んでしまい、途中で読み進むのが怖くなってしまいました。そして目頭が熱くなる場面も。。。
山本周五郎賞を受賞し、映画化もされた話題作で、そんなミーハーな作品なんか、なんて思っていたのですが、このところ荻原先生の作品をまとめて読んでいるので、手に取りました。結果は、久しぶりに心が揺れた思いを味わうことになりました。
折原 一
沈黙の教室 ★★★ 20130808
700ページ弱の長編。倒述ものとわかっていても、そのからくりが容易に見抜けません。私は途中まで完全に思い違いをしていました。作者にまんまと嵌められていたようです。
謎が解かれると、それまで不思議だった出来事につじつまが合います。当たり前ですが。。。しかし手の内をさらしながらここまで作り上げてしまう折原先生はスゴイ!でも、仁科先生の結末はもっとハッピーにして欲しかったと思いました。
乾 くるみ
六つの手掛り ★★★★★ 20130802
ガチの本格です。先日読んだ法月先生の「しらみつぶしー」同様の短編集。林茶父(はやしさぶ)という探偵役を軸に物語が編まれています。題名も凝っていますし、構成にもひとひねりあります。
そしてなにより最終話の「1巻の終わり」。この編のためにすべてを仕組んだのでは、と思わせられました。久しぶりに唸りましたねー。
クラリネット症候群
★★★★★
20120826
マリオネット症候群とクラリネット症候群の2本立て。もう西澤先生の作品そのもの、というぐらいテイストが似ています。ありえない設定ですが、その中で“本格”みたいな。
表題作は書き下ろしで、マリオネット-だけだと、単行本1冊には尺が足りないということで書かれたとのこと。どちらも面白いのですが、どちらかといえば、表題作よりマリオネットの方が意外性もあって、より私好みかな。
林真紅郎と五つの謎
★★★
101007
乾先生といえば、バカミスであり、イニシエーションやリピートが思い浮かびますが、、、ちょっと無理して編んだ短編集という感じです。
確かに本格ですが、その本格の部分は無駄な描写がない分見通しやすくなっていると思います。終章であっという仕掛けが!と思いましたが本格の部分は優しかった(笑)です。これは私の勝ちだったな。
イニシエーション・ラブ
★★★★★
100207
なるほど、そうきたか、というかんじ。裏表紙の作品紹介を読まなければ10倍驚くことが出来たのに。。。まあしかし、その惹句が無ければ読まなかったかもしれないか。 本格のつもりで、精読すれば気がつけたかもしれませんが、300ページに満たない中編なので、一気に読んでしまいました。確かに「必ず2回読みたくなる!」ね
塔の断章
★★★★★
2005.5.18
これこれ!やっぱり推理小説はこうでなくてはいけません、って感じです。「ジグソーパズルを組み立てるように読んで」とは作者の辞ですが、まさにパズルライクな謎解きが可能に仕上がっています。ある程度仕掛けに気がついたつもりでしたが、“つもり”でした。完敗。
匣の中
★★★
2005.4.29
「匣の中」を読んだので、続けて読んでみました。しかし、、、。とにかく私にはわかりにくい。「Jの神話」は予想外に面白かった?だけに、本作はハッキリ言って期待はずれでした。
話は推理小説愛好グループのメンバーが書いた小説をなぞるように事件が発生するという、そそられる展開なのですが、例えば暗号解読のやりとりなどはどうもピンと来ませんでした。
Jの神話
★★★★★
2004.12.1
デビュー作。バカミス!で話題になってちょっと気になる作家でしたが、なんとなく手に取ってみました。全寮制の名門女子校、「黒猫」の異名を持つ探偵、、、前時代的なよくある探偵小説と思いきや。。。
本格、と呼ぶのは難しいですが、ありきたりの推理小説に飽きてきた方には衝撃的かもしれません。私にとっては、、、笑激的でした(そんな日本語はない)。
五十嵐貴久
誘拐 ★★★★★ 20131102面白かった。必要な描写にしっかりとページを費やして、読み応えを確かなものにしてくれます。後半はほぼ予想通りで、これまた気持ちよくページをめくる手が進みました。推理という意味では、たまたま何となく予想できてしまいましたが、着地点もこれなら満足です。
Fake ★★★★★ 20131011
すっかり(私が)ファンになってしまった五十嵐先生が書いたコン・ゲーム。入試のカンニングから始まり、10億円をかけたポーカーへ。勿論仕掛けはいろいろとあるのですが、読了して満足感ありです。
東大生の加奈というのが魅力的で、結局ラストも彼女がカギとなっています。続編の構想もあるという話もあったようですが、、、
TVJ ★★★★★ 20130713
まるまるダイ・ハード。主人公である女子経理部社員が、ビルに立てこもった犯人グループを相手に一人で立回り。かしこにブルース・ウィリスの痕跡が(笑)。でも、とにかく面白さもダイ・ハード同様で十分楽しめました。
どうせなら映画化して欲しい。ヒロインは、今なら綾瀬はるかさんが第1候補かな。
蒼井上鷹
俺が俺に殺されて ★★★★ 20130715
素直に笑って読むコメディー・ミステリー。オチもそんなところでしょう。西澤作品あるいは乾くりみ先生の某作とは違った味わいがあります。
最初から溜飲が下がる決着を期待せずに読めば、これは傑作!
堂場警部補の挑戦 ★★★ 20121125
全4話ですが、最終話は書下ろしとのこと。そして書き下ろしたわけも最後の2行でわかるしくみになっていました(笑)。
トリッキーで奇想天外という意味ではそのとおりで、話が2転3転していきます。ただ、蒼井先生の持ち味としてはちょっと違う感じがしました。ひねくれているのが好きと言っても…ちょっと期待はずれでした。
これから自首します ★★★ 20110805
蒼井先生らしくない、という感じ。面白くなりそうな部分も垣間見られる、けどせっかくの舞台づくりも生かされずにおわってしまう、という感じでした。ラストも?です。
挿入の2次的なストーリーも、なにに結びつくのか、よくわからないままでちょっと消化不良。骨格のアイディアは面白いのに、残念。
二枚舌は極楽へ行く ★★★★★ 2009.10.15
12編の短編集だが長さはまちまちで、退屈しないように内容と合わせて上手く配列されています。あっという間に読了。早くも氏のスタイルが確立されたようで、独特のスマートさが読みやすいです。でも、一般評としては“小者のセコサが良く出ている”というようなものらしいですが。。。
まあ、小者の私にはぴったりなのかも。
どちらかといえば、長編が好きで、特にショートショートは、昔星新一先生の傑作をたくさん読んでしまったので、いまさらという感じであまり食指が動かないのですが、本作は配列の妙もあってか、どれも面白く読めました。
出られない五人 ★★★★ 2009.3.7
あるミステリ作家の秘密追悼集会で巻き起こる事件。集まった五人が様々な事情を抱え、絡みながら話は思わぬ方向へ。そして大方の予想とは異なるだろう結末に、と思ったらちょっとしたドンデン返し。おもしろかった。
ライトノベルという感じで、題材に殺人犯やら死体がでてきますが、推理するのとは違った楽しみを感じました。でも、先に読んだ「まだ殺してやらない」と同様の雰囲気を感じましたので、既に作者の“味”を確固たる物にしているのでしょう。今後も読んでみたい作者がまた一人増えたようです。
まだ殺してやらない ★★★★ 2008.11.19
作家が探偵。ありがちなシチュエーションですが、主人公とは別に探偵社も存在していて、構造にひねりがあります。オープニングに007の映画のような導入が用意されていて、これも読み手を誘う良い役割を果たしていると思います。
真犯人は誰か、ガチの本格というより、直感的にコイツでは?で当てることができそうな感じです。しかし最大の衝撃は、「結末はwebサイトで」、、、で、案内されているU.R.L.で当該ページが見つけられなかったこと!
綾辻 行人
鬼面館の殺人 ★★★★★ 20130619
館シリーズ9作目。前作の「びっくり-」がいまひとつだったので、ちょっと心配でしたが取り越し苦労でした(笑)。ガチっときてます。とはいえ、今回も全体をきちんと“見抜く”のはちょっとムリ。
ある意味普通の推理小説に近いかもしれませんが、独特の綾辻風味は十分堪能できますし、本格としての楽しみも味わえると思います。次回作はいよいよ館シリーズのラスト。さて?
びっくり館の殺人 ★★ 20130426
またこんな。「館」シリーズ8弾ですが、ロジックに重きを置いていたシリーズ初期とは違ったものになっています。一応密室殺人は出てくるのですが、もうどうでもいい感じ。この独特の怪しい雰囲気が好きな人は良いかもしれませんが、私は綾辻作品にはもう少し違うものを期待してしまいます。
残すところあと2つ。以前に作者がインタビューで「館シリーズは全10作の予定だが、大団円的な構想はない」というような発言をされていらっしゃったように記憶しています。でも、何かありそうな。。。
最後の記憶 ★★★ 2008.11.2
久しぶりの綾辻作品。でしたが、そのオチは、、、
ちょっと期待が大きかっただけに、「最後の記憶」の正体が本当にそうなら、結局何でもアリってことでは。ホラーの恐怖と本格ミステリの驚き、とありますが、後者の驚きはあまり感じられませんでした。単にホラーでよいのでは。であれば、期待の仕方も違って、もっと面白く感じられたような記がします。
暗闇館の殺人 ★★★★ 2007.1.2
完成までに8年かかったといわれる原稿枚数2500枚という長大な作品。年末年始のお休みを利用して読みました。確かにシリーズ最大・最深・最驚の「館」と銘打つだけのことはありました。ちゃんと注意深く読めば、時間のずれは気がつくことができますし、おそらくその前提で仕掛けたのでしょう。この「仕掛け」は本当に“驚きました”。
でもでも、あれは?これは?どうなったのか?と、おどる「?」に解決がついてないモノが多すぎます。今後の作品で明かされていくのでしょうか。それが残念でした。まそれにしても、久しぶりの綾辻作品。読み応えは十分で、満足です。とっておいたかいがありました。
どんどん橋、落ちた ★★★~★★★★★★ 040425
究極のフーダニットという宣伝文句も許しましょう。挑戦状入りの作品を含む5編。とにかくガチガチの本格にこだわるなら、ここまで来るということですか。久々に綾辻作品読みましたが、とても面白かった!
十角館の殺人 ★★★★★★★
著者のデビュー作。久々に全面降参。こんなに面白く感じたのは中学校のとき読んだXの悲劇以来。館シリーズは全10作の構想だそうですが、クイーンのレーン4部作のようになるのでしょうか?(国名シリーズではなく、シリーズ全体に大団円がある形になれば良いと思います)先が楽しみ。
水車館の殺人 ★★★★
今のところこのシリーズとしては例外的に、ややありきたりの印象。ちょっと納得できないトリックも含めて…。決して面白くなかったわけではありませんが。
迷路館の殺人 ★★★★★
これもいいトリック。前例はあるらしいですが、私は初めてでした。その手がかりの部分が、日常あまり考えにくいシチュエーションなので、ますます見抜きにくかったと思います。でも、一応筋は通っています。
人形館の殺人 ★★★
想像した中で最もそうであって欲しくなかった結末。これは館シリーズではやって欲しくなかったです。というのは言い過ぎかもしれませんが、やはり残念。文庫版の解説にはもっともらしいことが書いてありますが、言い訳のように感じました。勿論推理小説としては水準以上なんだろうと思いますが。評判の高い『時計館』に期待。
時計館の殺人 ★★★★★★ 2000.6.4
期待通りの作品でした。題材の“時計”という機械仕掛けが予感させるパズルテイスト,新本格派最高峰と謳われる作品評。ガチガチの本格でした。そして嬉しくも今回は、ほぼ私の完勝!トリックも筋書きも犯人も、ほぼ読みとることができました。館シリーズを初めて読むのであればやや反則とも取れる中村清司のお約束も、既に5作目で当たり前として捉えることができますから、その分他の手掛かりに神経を注ぐことができました。文庫にして約600ページの大作ですが、大満足です。なお、新書版のあとがきには、もっとも愛着のある作品は「人形館の殺人」と書いてありました。…なんだか。。。
第45回日本推理坂協会賞を受賞しています。
黒猫館の殺人 ★★★★★ 2000.6.7
「時計館」があまりに面白かったので、我慢できずに読んでしまいました。…なめてました。本作もちゃんと手掛かりは(たくさん!)示されているのですが、今回は正解に辿り着けませんでした。私はあるクリスティーの作品を連想してしまい、それに引っ張られてしまったのが敗因だと思います。未読の方でヒントを読みたくない場合は以下の文章を飛ばして下さい。
*作者のあとがきでも触れていますが、この作品の一番大きな仕掛けは終章の一つ前で明かされます。しかしこれはちょっと無理。謎解きに挑戦するのはシャワー室で起こった件(これが終章で解説される)。この密室は実にオーソドックスで、奇をてらった発想は不要です。また、このシリーズ特有の中村清司による特別ルールも適用されません(笑)。もし万が一、私と同じように犯人当てに挑戦しようと思う方は、終章にはいる前に、「シャワー室の件の犯人は誰か?」という挑戦状が入ったとした方が良いと思います(余計なお世話か)。
しかし、館シリーズはやっぱり良いです。
殺人鬼 ★★★★★
ホラー。賛否はあるでしょうが、この仕掛けも新鮮でした。これは推理して楽しむと言うより作者のお遊びにおつきあいする、という感じの仕掛け。SF小説なんかにあるかもしれません。
殺人鬼Ⅱ ★★ 1999.9.25
第1章でいきなりやられてしまいました。一応予想していた仕掛けは、もうひとつでした。ファンの方には申し訳ないですが、私は館シリーズや方程式シリーズの方がいいです。でも、文庫本のあとがきには“Ⅲ”を書くことも明言されていますので、出れば…やっぱり読んじゃうんだろうな。。。
殺人方程式 ★★★★
本格に恥じない内容。犯人当てに絞ってしまえば雰囲気でわかってしまいそうですが、ちゃんと理にかなっています。なお、文庫版は初出時のトリックに関するエラーについてどう訂正したかの解説があります。
鳴風荘事件-殺人方程式Ⅱ ★★★★★ 1999.3.21
殺人方程式の正当な続編。前作は是非読んでおいた方が良いと思います。読み応えがありました。挑戦状入りなのですが、犯人の手がかりはとてもわかりにくいです。というか、ある事柄については、まさに推理して導かれることなので(ズバリの描写でない)、私にはちょっと無理した。でも、動機はきちんと提出されます。双子のキャラクタがとてもいい味だしていて、これもシリーズとして続けて欲しいです。
緋色の囁き ★★★★★
囁きシリーズでは今のところ一番面白かったです。犯人の正体よりも、構築された学園世界の全貌が明らかになっていくことに興味が集中しました。
暗闇の囁き ★★★★
江戸川乱歩を思わせるようなホラーの雰囲気。この独特の味は最早この著者の持ち味として定着したかな。それにしても囁きもシリーズで続くのでしょうか?
黄昏の囁き ★★★
やや期待はずれ。この手のサスペンスなら、宮部みゆきの方がいいと思います。解説には囁きシリーズも是非続けて、とありますが、どうせなら館シリーズに力を注いで欲しいです。
霧越邸殺人事件 ★★★★★★
力作。純粋な“本格”では無いと思いますが、読み応えは充分。これも謎解きよりも構築された世界観を読み解くことに興味がわき、その部分で楽しめました。それにしても、ヒロインがすてき
恩田 陸
訪問者 ★★★★ 20130915
これまた幻想小説のような、「本当」なのは何かがわかりにくいまま物語が進んでいきます。最後まで読めば物語はちゃんと閉じますが、その気になればさらなるどんでん返しも可能で、本当の終着にたどり着いた感じが希薄です(笑)。
恩田先生の独特な雰囲気は本作でも感じられますが、初期の作品群にあったロジックの楽しさが少なくなっているように思います。それこそ作風が変わったということかもしれませんが。
我孫子 武丸
少年たちの四季 ★★★★★ 20130910
我孫子先生テイスト満々の4連作。超常現象チックであっても、納得できる展開で安心して読めました。
シリーズものにしても十分続けられると思いますが、いちおうここで完結のようです。
東 直己
フリージア ★★★★★ 20130925
のっけからすごい展開です。6ページ目を読み始めて、頭がついていけず5ページ目を読み返しました。あれ、何か読み落としたか、と。まあ、その掴みにひかれてあとはぐいぐいと物語に引っ張られました。 東先生は「探偵はバーにいる」の作者ですが、こちらはコミカルな要素はほとんどなく、バリバリのハードボイルドでした。しかも続編もある。私の最近の好みに直球ストライクでした。
残光 ★★★★★ 20130929
「フリージア」の続編。テーマは今回も多恵子を守ることですが、不複雑な事件に絡まって、追いつ追われつのチェイスでは、主人公榊原健三が持てる能力を発揮して活躍します。本作では、「探偵は-」のすすきのの“俺”をはじめ、別の作品で活躍する登場人物が何人も出ているらしく、これから東ワールドに引き込まれそうです。(ほかの作品も読みたくなるという意)
大沢在昌
罪深き海辺 ★★★★ 20131110上下巻合わせて約900ページの長編。さすが大沢作品だけあって、安心して読めます。読みやすく面白い。大沢先生の描写は、私の貧弱な感性にも良く合うようです。暴力団やその地の実力者など、お馴染みの登場人物構成ですが飽きません。最後にはちょっとしたどんでん返しもあり、このぐらいが私にはぴったりです。
ブラックチェンバー
★★★★
20130327
法を超えた正義の秘密結社。設定はばっちりで、スタートの描写からわくわくする展開です。犯罪組織をつぶし、その犯罪組織が持っていた金を資金源にする。面白い展開でした。でも、本当のストーリーはそれじゃなかった、というのが意外性を狙ったところだと思いますが、私としてはかえって残念でした。
500ページ近い長編ですが、3部作くらいにして、中間にもっとブラックチェンバーそのものの活動による話を盛り込んでもらいたかったです。
魔女の盟約
★★★★★
20120721
「魔女の笑窪」の続編。もうなんでもありのサスペンス劇場。主人公は韓国,中国を経て日本に戻り、中国の女刑事の復讐に手を貸す形で、自分の復讐も遂げます。
著者が「タフな女の物語」と語るように、なかなか骨太な話になっています。これはしばらくすると、きっとまた続編が。
黒の狩人
★★★★★
20120413
狩人シリーズの第3弾。あえて上下2分冊。もうマンガみたいな展開ですが、とにかく面白い。そして前作ほど悲劇に振っていないので、その点も○。というか、これが第1弾だったら、大団円的結末ができすぎに感じて逆に評価を下げたかもしれませんが、悲しい結末の“次”だっただけに高評価になったかも。
鮫島がかっこよすぎると感じる人はこちらの方が良いでしょう。次回作も期待。
魔物
★★★★
110105
魔王でなくて魔物。本当に魔物話でした。人間に取り付いた魔物をどうやって退治するか。舞台は現代日本ですが、ダンジョンandドラゴンズの世界です。もしこんなことになったら、やはり誰も信じてくれないだろうから、なかなか物語りに入り込むことができませんでした。
超常現象の説明に腐心するくだりはありません。最初からそのつもりで読めばもっと楽しめる時間が長かったかと思うと残念。上下巻合わせて訳80ページの長編。
亡命者ジョーカー
★★★★★
101225
ジョーカーシリーズ。ハードボイルドの見本です。どれも面白かったです。短編としては満足です。やはり大沢先生のこの手の話は安心して楽しめます。
解説にもありますが、読み込んでもなかなか主人公の人物像が浮かんできません。しかしそこがこのシリーズの大きな魅力になっていると思います。
影絵の騎士
★★★★★
100206
スケールの大きな近未来の陰謀もの。さすが大沢作品です。「k」に続いて読みましたが、満足。強いて言うならエンディングはもっとハッピーにして欲しかったな。
B.D.T.という前作はかなり前に読んでいて、あまりよく覚えていませんでしたが、それでも充分面白かったです。すでに世界観ができあがっているだけに、より深く楽しめました。
Kの日々
★★★★★
100130
こういった犯罪小説なら、大沢作品は安心して読めます。謎も上手い具合に散りばめてあり、着地点も見事です。そこに至る布石もきちっとしています。
これで本格推理ものを書いてくれたら、、、面白いだろうなー、と思うのはあまりいないのでしょうかね。
魔女の笑窪
★★★★
091117
前半のクールな展開は、久しぶりに読み応えのある連作にあたって嬉しくなってしまいましたが、後半の完全に続きものになってからは、ややありがちな展開で、残念ながら私のテンションは失速してしまいました。
物語としては面白く、ちゃんと決着もつけてくれるので、ネバーエンディングがあまり好きじゃない私にはぴったりな連作なはずでしたが。。。どうも好みが変わってきた感じです。
新宿鮫 IX 狼花
★★★★★
2009.8.28
仙田、ロベルト・村上再び登場。この巻はレギュラーや準レギュラーの、なんとなくらしくない描写がいくつもあって、ちょっととまどいました。が、シリーズ読者としては充分面白く読めました。もはや舞台背景の細かい描写がなくても、深く楽しめ(るような気がし)ます。
しかし、次巻はたいへんだ。。。
ニッポン泥棒
★★★★
2009.6.22
プロットは大変面白い。上下巻で900ページ超が長く感じません。ただねー、扱っている題材がどうしても底が浅いなー。惜しい。
この手の話の場合、マクガフィン(映画「ローニン」みたいな)でないと難しいのでは。IT世界はどんなに背伸びしてもすぐ陳腐化しちゃう。
パンドラ・アイランド
★★★★★
2009.3.21
上下2分冊の長編。大沢ファンには納得の一冊でしょう。前半はたくさんの謎が絡まって、残り二割ぐらいの所から怒濤のラストスパート。結末もo.k.です。ただ、“チナミ”という女性だけが、最初登場した雰囲気から、途中で随分と雰囲気が変わってしまい、オチも少しかわいそうかな。
堂々のハードボイルドで、映画化しても充分面白くなりそう。
六本木聖者伝説
★★★
2007.11.3
上下二分冊の文庫で、計1000ページ近い大作。ですが物語としては序章の段階で、想定する敵組織が大きすぎて収拾がつかなくなってしまった感じ。これまでにも荒唐無稽でスケールの大きな話はいくつか読み、それなりに楽しめたのですが、本作は打った布石が生かされてなかったり、思わせぶりなところが結局説明されなかったり、明らかに矛盾した場面が出てきてしまったりと、完成度に難有りと感じます。
まだ続きが書けるような終わり方ですが、これはもういいかな。
帰ってきたアルバイト探偵
★★★★
2007.8.1
前作から12年を経て発表された続編。まさか社会人に?と危惧しましたが、前作を引き継いで堂々の高校4年生。相変わらずイカしてますね。
物語もこれまでにないスケールと構成で、ページ数も最大。奇をてらったどんでん返しでなく、これまでに培ってきた世界観のまま、シリーズ読者が安心して読める良作です。武器商人モーリスとか別のシリーズの準レギュラーとつながるのか、と思わせるようなところもあって十分楽しめました。
ジョーカー
★★★★★
2007.4.22
このシリーズも良いですね。ほどよい長さの短編6作。実は佐久間公の後日談で、上手くつながってくれるかな、とまで思いましたが、その佐久間公の後日談的作品そのものが上梓されているようなので、予想ははずれでした。
ここでも魅力的な登場人物がたくさん出てきて、物語を面白くしてます。「~の伝説」は大団円が待っているか、と思いきや。
新宿鮫VIII
★★★★★
2007.4.19
記念すべき1作目に登場した真壁の後日談とも言えるべき作品。既に世界はできあがっているので、物語をしっかりと味わうことができました。700ページ弱の文庫本が2日で終わってしまいました。
とにかく登場人物がたいへん魅力的です。大江という駐車場の管理人、そして深見と名のる面白い役割の男(多分そうだと思ってました)。
秋に墓標を
★★★★
2007.3.21
これも文庫上下2冊の長編。最高のハッピーエンドではありませんが、この結末もぎりぎりO.K.かな(笑)
過去を捨て田舎で静かに暮らす主人公、謎めいた美しい女性、犯罪のにおいのする国際企業。王道の設定の元に、適度な布石を生かし、物語は進んでいきます。既にそこそこの数の大沢作品を読んでいるので、安心してハードボイルドに浸れました。主人公の視点で書かれており、登場人物もそれほど多くなく、物語の構造がわかりやすくて、その分のめり込めたようです。
闇先案内人
★★★★
2007.4.4
文庫本上下合わせて800ページ弱。プロの逃がし屋というありがちな話ですが、そこは大沢作品、奇をてらった設定ではなく、内容で読ませてくれます。第20回冒険小説協会大賞受賞作のことだけはあります。ってこの賞のことはよく知らないわけですが、世評も高いということですね。
エンディングもまずまず満足です。これならぜひ続きを書いて、様々事柄の決着をつけてみるのも悪くないのでは、と思います。登場人物も本当に魅力的でイイ。
涙はふくな、凍るまで
★★★★★
2006.7.1
「日本一不運なサラリーマン」第二弾。これも前作に負けず劣らず面白く仕上がっています。切り口は同じですが、今度の相手は「ロシア・マフィア」。ふつうなら荒唐無稽で白々しくなってしまうのですが、そこは大沢先生。随所にリアルな描写を持ち込み、単なるお笑いで終わらせない説得力を持たせています。
残念ながら、この作品もこれ以降が続いていません。もっと読みたいなー。
走らなあかん、夜明けまで
★★★★★
2006.3.18
「日本一不運なサラリーマン」坂田が主人公の第一弾。といってもこのシリーズもやはり2作目までしかありませんが、それはともかく面白い。ギャグ的な面白さが前面に出てしまうと、往々にしてかえってしらけてしまいますが、そのあたりのバランスは絶妙で、さすが大沢先生です。不運であって不幸でないところが良いところ。
キタやミナミを走りまくり、否応なしに事件に巻き込まれていくのですが、周辺人物の魅力と、(私が)一時期大阪に住んでいた懐かしさが相まって、とても面白く読むことができました。
深夜曲馬団
★★★~★★★★
2006.11.28
ハードボイルドの5編。各題名と内容が、うまく結びつかないような気がしました(笑)。この中では、「空中ブランコ」が、“標的はひとり”の後日談から入っており、そういう意味で面白かったです。
裏表紙には、秀作「鏡の顔」他、四編という紹介の仕方がしてあります。ちょっと悲しい話で、ハッピーエンドが好きな私にはもうひとつ、かな。
死角形の遺産
★★★
2006.09.11
つかみは大変良くて、最初期の作品とは思えない練り込みを感じましたが、後半やや荒唐無稽な設定が全面に押し出される格好になってしまい、せっかくの緊張感も持続しませんでした。
同姓同名が元で誤配された郵便物。凶弾に倒れたミュージシャンのカセットテープ。舞台を盛り上げる道具は揃っています。またきちんと結末も用意されており、具体的な不満は挙げにくいのですが、やはり後半に進むにつれ、なぞめいた部分が、非現実的な描写になっていき、ちょっと残念。
女王陛下のアルバイト探偵
★★★★★
2006.08.19
個人的には、未読の「帰ってきた~」を除いたこのシリーズで一番面白かった作品。適度に話しも練り込んであるけれど、決して重くならず、軽妙な親子のやりとりに、気持ちよく読めました。発表順でいうと、シリーズ初の長編。
しかし、この作品を楽しむためには、やはりシリーズ読者になっておいた方が良いことは間違いないと思います。何しろそれまでの短編で培われた設定が生きてこその“味”が随所に見られ、それがこの作品を更に面白くしていますから。
アルバイト探偵 拷問遊園地
★★★★
2006.11.5
最近重い話ばかりだったので、少し軽めと思ってチョイス。レビューはまだ書いていませんが、「女王陛下~」を合わせてこのシリーズの5作目。これは手頃な長編で、読み応えもまずまず。
しかし解説にも書かれているとおり、主人公が成長してきたこともあり、このシリーズ本来の軽妙な面白さがやや薄れてしまったように感じました。
砂の狩人
★★★★★
2006.11.3
これも文庫で上下分冊約1000ページ。とにかく面白い。あれ、書き出しが同じになってしまう(笑)。狩人シリーズ第2弾、といっても主人公ではなく脇役キャラの佐江のみが共通の登場人物。
たっぷりページを費やして構築した舞台が、2冊目の中盤あたりのクライマックスは私には極上でした。真犯人は“本格”でいえばルール違反ですが、結末に辿り着くと、それはどうでもよくなってしまいます。でもねー、やっぱりこんな終わり方はヤだな。
それにしても、続編を読みたい作品がいっぱいあるのに、大沢先生のシリーズは2作までしかないのが実に多く、何とかして欲しい。
夢の島
★★★★★
2006.10.26
冒険小説と呼べるような、宝島を目指す話。謎や人物関係が巧みに配置され、一気に読ませてくれました。半分くらいは読者が見抜くであろうことも予想してのストーリー運びは一級品です。
しかーし、人の死で決着をつけるのは、ちょっと食傷気です。これは私の読む順番に大きく左右されるため、この作品の評価にはあたらないわけですが。
ダブル・トラップ
★★★★
2006.10.15
荒唐無稽と切ってしまっては身も蓋もない。この世界観を受け入れられれば、ものすごく面白いです。表に出てこない政府の秘密組織、それとは別の新興勢力。そして罠だったりウソだったりと、もうこれでもか、というぐらい登場してきます。
残念だったのはラストの締めくくり。大団円的なハッピーエンドが好きになってきた今日この頃ですが(笑)、そこまで行かなくても、あのような終わり方ではなく、××についてはちゃんとしたうえで、好きにする、というようなぐらいにしておいて欲しかったです。
眠りの家
★★~★★★
2006.06.11
約260ページに6編を詰め込んだ短編集。裏表紙には表題作が名作としていますが、一番印象に残ったのはややホラー調の“夜を突っ走れ”かな。
やっぱりハードボイルドで40ページ前後の短編では物足りない。どうせ大沢先生の作品を読むなら、じっくり長編がいいな。
冬の保安官
★★~★★★★
2006.09.25
表題作を含めた4作と3編からなる連作、やや長めの短編、そして番外編、という配列。そのうち連作はSFで、なかなか面白くなりそうな設定なのですが、あれこれ予想した結末には至らず、中途半端で終わっています。どうも掲載紙が休刊になったとか。今更ムリと思いますが、できれば続きも書いて欲しいです。(書いてたりして)
番外編は大沢先生の代表的な3作の登場人物がでてきます。が期待したような面白さは全くありませんでした。ちょっと残念。
東京騎士団
★★★
2006.07.14
世界制覇をもくろむ秘密結社「超十字軍」。青年実業家の主人公が敢然と立ち向かう。と書いてしまうと恥ずかしくなるような荒唐無稽のお話ですが、これをハードボイルドとして最後まで読ませてしまう大沢先生は、やっぱりすごい。
でも結末もちょっとのけぞり。これでもう少し別の形でランディングさせてくれていたら、、、
北の狩人
★★★★★
2006.04.05
もうひとりの新宿のヒーロー、というのは文庫本の帯の文句。でも読み進むうちにヒーローと指された主人公より、その周りの骨太な“男”たちがこの物語を面白くしていると思いました。特に宮本あたりはいい味出していて、主人公の魅力をしのいでいる感さえあります。そこが、新宿という街と鮫島というはぐれ刑事が物語の魅力の中心におかれている「新宿鮫シリーズ」とは大きく異なるところでしょう。
ところでなぜ、“新宿”にこだわっているかというと、解説には新宿鮫とは別の視点から新宿という街を描いた、というような説明がされています。でも果たして、そんなことを考えながら読む人がどれくらいいるのだろうかと疑問に思います。そんなことを考えながらこの評をかいたので、★は多いのになんだか全然ほめてない(笑)。文庫上下2巻の大作です。
撃つ薔薇AD2023涼子
★★★★
2006.02.21
社長の正体という、謎のショッカー首領のような存在がたいへん良いです。内容は全く異なりますが、太田忠司先生の涼子シリーズを思い浮かべました。ただ涼子つながりだけなんですが、なんとなく。。。
お得意の近未来ハードボイルドですが、ごく一部の事情を除いてあまり近未来の設定に必要性を感じませんでした。どうせならもう少し時代背景を生かす展開があっても良かったかな。全体的にはgoodで、特にこのようなエピローグの雰囲気はすきです。
銀座探偵局
★★★★
2006.01.17
コメディ・ハードボイルドとでもいうのでしょうか。「らんぼう」ほどではないにしろ、シリアスな作品群とは一線を画す5作の短編集。
雑誌の編集者と、ホテルの御曹司が探偵となって、事件を解決していきます。意外と本格の要素もあって、謎解きも面白かったりします。でも、大沢先生で、わざわざ読まなくても良いかな。
夏からの長い旅
★★★★
2006.06.26
ちょっと予定調和的な後半の流れを感じてしまいます。また、大沢先生の比較的初期(デビュー4~5年?)の作品と言うこともあり、文体がこなれていないようにも思います。遠回しな言い方が気になると言いますか。
ただし、主人公が秘めた戦闘能力を持っているという、よくあるタイプでないところに、少し惹かれました。また極めて美しい訳ではないヒロインの描写も良いと思います。なにしろハードボイルドのヒロインは極美形と相場が決まっていて、そうでない場合の魅力の持たせ方というのは、実はとても難しいでしょうから。
黄龍の耳
★★★
2006.06.20
面白くなりそうだったのに。というのが第1の感想。中高生対象の雑誌に連載された、ということですが、こなれた文章とSFな設定の相乗効果で、期待してしまいました。でも中盤にさしかかって、これは1冊ではとてもおさまらないのでは、と感じたのが、残念ながら的中。
最初、裏表紙の「古代中国の皇帝の血をひく男」というセンテンスを目にして、勝手に歴史物と思いこんでいたのですが、それは全然関係ありませんでした。でも、「北ヨーロッパ、アメリカそして日本と舞台を移しながらの宿敵との対決」というのはちょっと違いますね。
心では重すぎる
★★★★★★
2006.06.9
佐久間公シリーズ。文庫は上下に分かれた計約850ページ。これは傑作でした。失踪した人気漫画家捜しから始まりますが、当然それ以外の物語が絡み合いながら進行します。クスリの利権争いや自己啓発セミナー。惜しむらくは依頼人側の顛末かな。
このシリーズは時系列的に読んでいないので、せっかくなら順番に読めば良かったと感じています。どうも人物の背景が今ひとつぼやけてしまってもったいない。
標的はひとり
★★★★★
2006.02.22
主人公は非合法の国家の裏組織に所属していたメンバーのひとり。敵は1匹オオカミのスナイパー。ガチガチのハードボイルドです。最後の最後まで勝者がわからない展開で、ラストの数ページはドキドキしながらめくりました。
ひょっとしたら、と思った大胆なエンディングには、やはりなりませんでしたが、これでもゆるせます。
ジャングルの儀式
★★★★★
2006.02.19
これはヒロインがたっていました。スリリングで充分楽しめ、終盤の展開も良かったのですが、なにしろヒロインにやられてしまいました。
スタートこそ、主人公が父の敵打ちのために、ハワイから日本にやってくるという、なんのひねりもないストレートな幕開けですが、もちろんそれは単なる前フリです。本当の“敵”の設定も良いです。
未来形J
★★★
2005.11.9
終章を一般公募という型破りな形式で話題になったファンタジック・ミステリー。本編は200ページに満たない長さで、登場する個性的な5人組が、どうも上手く活躍せずに着地してしまった感じがしました。それぞれの問い常人物をもっと掘り下げると、同じ展開でも相当話がふくらんだのではないかと思います。しかしながら、結末の一般公募の手前、あまり深くすることはできなかったのでしょう。
と、理由は察しますが、やはり読んでみて物足りないのは事実。また応募作品の中から選ばれた終章も、私の好みの展開ではなかったので、★が辛くなりました。
眠たい奴ら
★★★★★
2006.05.30
700ページ近い大作。主人公は特殊な能力を持っているわけではないが、ハードボイルド定番の一匹狼で、相手はやくざに市長に警察署長。宗教も絡んで大混戦。結末はだいたい予想通りの着地点ですが、ちょっとかわいそうな部分もあります。また、相棒のアウトロー刑事が、関西弁でたいへんいい味を出していて、要所で重要な役割を果たします。こういう脇役が実に“イイ”。
なお、題名の「眠たい」は“ねむい”ではなく、関西弁で言うところの“しょうもない”というような意味です。
らんぼう
★★★★
2005.12.9
腹を抱えて笑える凸凹コンビの刑事物語。題名の「らんぼう」は文字通り乱暴者の意味で、めちゃくちゃな行動でおよそ現実離れしていますが、そこが魅力です。約350ページを10編で構成していますが、特に起承転結があるわけでもなく、どれもそれなりに面白く読めました。
更に解説は、西原理恵子先生のエッセイ風マンガで、これが2倍笑えます。
悪夢狩り
★★★★★
2006.5.29
荒唐無稽な内容で、いってみればホラー。「暗黒旅人」と同じような感じです。ただし、私にはこちらの方が数倍面白かったです。ナイトメア同士の戦いにもっと期待したのは自分だけかな。まるでデビルマンのノリですが、これはこれで良かった。
理屈は一切抜きで、物語の都合に合わせたのみの設定やアイテムは、ふつうならバカバカしくなるところでしょうが、最近大沢作品に“はまっている”自分には充分楽しめる作品でした。
烙印の森
★★★★★
2006.5.26
この300ページそこそこの中で、ひとつの世界が完結します。架空の“裏社会”が生々しく伝わってきます。ときにはまわりくどいくらいの描写が、よむものを引き込むのだと思います。
現実にはありそうもない、殺し屋やその道の“プロ”達の戦い。ワクワクしながら読むのは、ちょっと不謹慎?
追跡者の血統
★★★★
2006.5.25
佐久間公シリーズ。とにかく読む順番がめちゃくちゃなので、あ、このエピソードは、とか、ああこのことか、など色々錯綜しながら読むことになっています。短編はともかく、長編では時系列的に読んだ方が良かったかな、と思う場面もありました。また、本来まだしっかりと立ってない登場人物が、私の中ではすでに固まっている部分もあって、ちょっと不思議な感覚もありました。ほどよい長さですが、事件の後日談が何もないのはちょっと寂しいかな。
これが佐久間青春編の完結で、このあとはいっきに「雪蛍」まで飛ぶことになるとのこと。
死ぬより簡単
★★★~★★★★★
2006.5.19
100ページ前後の中編1つと50ページ前後の短編3つの計4編。表題作よりも、中編の「ビデオよ、眠れ」の方が面白かったです。まさに大沢節とでもいうべき、1匹オオカミのハードボイルド。正統派ですね。
短編3本では、「スウィッチ・ブレード」が良かったかな。これは“プロ”が格好いいです。プロを感じさせる細かい描写が、作品の世界に奥行きを与え、短くても読み応えのあるものになっていると思います。
天使の牙
★★★★★
2006.5.22
上下2巻の長編。映画化されていて、「新宿鮫」と並んで大沢作品が気になる存在にさせてくれた作品。映画を見たのはかなり前で、内容も忘れてしまった部分が多いのですが、それでも原作とは全く異なる印象です。核となるストーリーの骨子は同じだと思いますが、登場人物はだいぶアレンジされていたようです。映画もそれなりに面白かったのですが、やはり原作はひと味違う感じです。
決着もこれくらいでちょうど良いです。もっとも印象に残ったのは、後半に出てくる仁王の幼なじみが、仁王とチームを組むきっかけとなったシーン。涙がでました。
B・T・O[掟の街]
★★★★
2006.5.13
これも近未来もの。「ホープレス」と呼ばれる不法滞在外国人と日本人の混血児。ここでも、まず舞台がしっかりと設定されていて、あっというまにのめり込むことができました。無法地帯とも呼べる東京の東側地域で、最初は失踪者の捜索だったのが、巨大な陰謀との対決へとツボを押さえた展開です。
しかし、終章はちょっとあっけない。というか、もうちょっと違った解決を予想していたので、もう一踏ん張りして欲しかったと思いました。
アルバイト探偵調毒師を探せ
★★★★
2006.4.14
このシリーズは読む順番がめちゃめちゃになってしまいました。そのせいか、当たりはずれが結構あるように感じます。そんななかで、70ページ前後の4編はどれも、それなりにこのシリーズの良さが出ていると思いました。表題作などは、そのネーミングからして、コメディとハードボイルドを混ぜたいい味がでてます。
いずれにしても、これは主人公を取り巻く舞台設定や登場人物の配置で“勝ち”ですね。
ウォームハート コールドボディ
★★★★★
2006.3.22
いってみればゾンビのお話。西澤テイストなSFハードボイルドで、とても面白かったです。予定調和な結末といえなくもないですが、これはこれで受け入れられました。一方でもっとも予想しやすい悲しい結末だった方が、以前の自分であれば良かっただろうとも思いました。しかし涙腺の緩くなった今の私にはこれぐらいでちょうど良い。
欲を言えば不死身となった主人公が、それを生かした活躍シーンをもっとたくさん読みたかったかな。
暗黒旅人
★★★
2006.5.10
大沢作品だから完読できました。ふつうなら途中で挫折してしまいそうな内容で、実際最後まで読んでも知りたいいくつかの事柄は、ついにわからずじまい。途中、ちょっと面白くなりかけるんですが。最後の敵はあっけないし。
先生の作品のなかでもやはり異色。でも先生自身は気に入っている作品のひとつだとか。
感傷の街角
★★★★★
2006.5.6
佐久間公シリーズの短編集。執筆はデビュー直後らしく、解説には実質的には処女作集である、と書いてありました。確かに主人公の人格が確立されておらず、相棒というべき沢辺も人物が“たって”いない感じです。でも、それぞれ読みどころはあり、まだまだ大沢作品を読んでみようと思わせる内容と思いました。
全7作中、表題作が新人賞受賞作で所謂“文壇デビュー作”。この斉藤という登場人物はなかなかイイ感じです。でももっとも面白いと思ったのは、ラストを飾る「師走、探偵も走る」でした。××時間前というのは何のことかと思ったら!
シャドウゲーム
★★★
2006.5.5
楽譜に秘められた謎は、なかなか解けません。しかし、そんなことより大どんでん返しというか、本格を指向した手がかりだと思ったのに、それには全く触れずにエンディングへ。えーっ!あれはそうじゃなかったの!
というわけで私の思いこみが先行した分、ラスト前まではワクワクしながら読み進めたのですが結末まで読み終わってちょっと唖然。しょせん。。。
不思議の国のアルバイト探偵
★★★★
2006.5.1
“アルバイト・アイ”シリーズも脂がのってきています。シリーズの読み出しがこれだと、いくらなんでも引いてしまいそうな気がしますが、お約束ごとが頭に入っていれば、この世界は受け入れやすく、題名だけでも面白く感じてしまいます。
私はこのシリーズを発表順に読まなかったので、主人公と父親の客観的な人間関係がどのように明かされてきたのか今ひとつピンときていませんが、それもこのシリーズを楽しむ要素の一つと思います。
氷の森
★★★★★
2006.1.19
ラストがややあっけない感じはしますが、なにしろ正体がなかなか見えてこない相手との戦いに惹かれました。裏表紙には「新宿鮫の原点」とありますが、だいぶ色合いは異なり組織と刑事というような構図はありません。
何人か魅力的な人物が登場し、なかなか想像通りの役割を演じてくれます。このあたりが読んでいて心地よいとでもいいましょうか、★の数を増やしてしまう理由ですな。
アルバイト探偵
★★★★
2006.4.21
私立探偵の父を持つ高校生が主人公で、コメディ色を多分に含んだハードボイルド。どこかルパン3世にも似たノリで、ありそうで意外と他では読めない設定です。短編ということもあるのか、どうしても軽いタッチになってしまいがちですが、先に読んだ(時系列的にはこの作品よりあと)長編はなかなかシリアスな描写もありました。そっちのほうがイイと思うのですが、作者の後書きでは意図するのはむしろこの“軽さ”のようです。
シリーズの1冊目。
流れ星の冬
★★★★
2006.12.22
おおハードボイルド。渋い大学教授の過去。この作品も散りばめられた登場人物が良いです。そして主人公の“こだわり”を捨てない行動が“かっこいい”と思わされます。こんなふうに年をとりたいと。
徐々に明らかになっていく、現在と過去の事件の様相が最後にどう結実するか。読み終わるまで止められないですね。
相続人TOMOKO
★★★★★
2006.4.15
主人公は元スパイで、組織を裏切りその組織に戦いを挑む。まさにハードボイルドであります。決着は案外あっけなかった感じですが、何人か深く彫り込んだ脇役も登場し、なかなか奥行きがあります。
東京騎士団とやや似た感じがありますが、同じ現実離れというなかで、本作の方がより面白かったです。
野獣駆けろ
★★★★
2006.2.15
ハードボイルドの王道的な作品でした。特にクライマックスの銃撃戦はスリリングで、まさに手に汗を握りながら読み進みました。
しかし、大沢作品、と呼べるような個性があまり感じられなかったのも事実で、せっかく大沢先生を読んだのだから、これぞ、というところも欲しかったと思いました。
雪蛍
★★★★
2006.4.11
佐久間公シリーズ第16作。をいきなり読んでしまいました。さすが設定がしっかりしていて、奥行きを感じます。約700ページの紙幅を生かして、大きく2つの話が進んでいきます。どこかで交わるのか、と思いましたが両方とも別々に着地します。
しかし布石のいくつかが、回収できてないので、××は結局どうなったのか、と次作に期待してしまいます。
新宿鮫VII
★★★★
2006.1.15
このシリーズの根幹に触れる部分があり、興味をそそられました。今回のピンチも並々ならぬものがありますが、ラストの活劇の映画的なシーンはたいへん印象に残りました。
謎が少しとけるのですが、かわりに前作で気になっていたアレは今回全くでてきません。果たして・・・?
新宿鮫VI
★★★★★
2005.12.22
さて氷舞。実は大沢作品群を読むきっかけとなったのがこれでした。「新宿鮫」も題名ぐらいは知っていたけれど、ある書評で「氷舞」という刑事小説がとても面白いとしてあったのが気になっていて、どうせ読むなら「I」から、と思ったのが始まりです。で、ようやくここまでたどり着きました。
シリーズを通して読んできて良かったと思います。既に各人物が深く掘り下げてあるし、いくつかの布石が生きていて、書評通りの傑作と思いました。ラストもなかなかです。
新宿鮫V
★★★★
2005.12.11
本来ならかなりゲテモノなストーリーになりそうですが、なにしろ既に世界は構築されていますので、このぐらいのことでは揺らぎません。そして、この一匹狼になかなか味のある助っ人が登場するのも、ページをめくるスピードを上げさせた理由と思います。
恐ろしい害虫が今にも羽化してしまう、それをくいとめるために、、、こうやって書くとなんともはや、と思ってしまいますが、「新宿鮫」の場合ひと味違いました。
新宿鮫IV
★★★★★
2005.12.3
毎回面白い。アイスキャンディ(キャンディ型覚醒剤)をめぐる、スリリングなストーリー。しかも結末の後日談的な描写はかなり意味深で、次作の事件以外の流れをなんとなく想像させられてしまいました。
文庫版の作者あとがきには、読売新聞出版からカッパノベル(光文社)への移籍のいきさつが書いてあり、これはこれでなかなか興味深いお話でした。
新宿鮫III
★★★★★
2005.11.29
和製ハードボイルドとして、本作も十分面白かったです。今回は主人公自身が標的になる経緯にウエイトが置かれ、よりスリリングな展開。
3作目に及び、設定が飲み込めた状態で読み始められるので、より物語を深く楽しめる気がしました。
新宿鮫II
★★★★★
2005.11.19
鮫2作目。こんなに面白いのか。と思いました。先入観があって、もっとありきたりの刑事物を想像していたのですが、1作目より更に現実離れしていて、娯楽として読むにはとても良いかったです。人間凶器との対決!わくわくしますね。
本格を読むとき、どうしても謎解きのためにある種の緊張感をもって読み進むのですが、こういった作品は映画を観ているみたいに楽しいことを発見しました。(実は2重におかしな言い回しだが、ま、そういうことで)
新宿鮫
★★★★★
2005.11.15
大沢先生のレビューを残すなら、大藪春彦,勝目梓,北方謙三,果ては清水一行 各先生などなども・・・。ま、いいか。
前々から読んでみようと思っていたシリーズ。大沢先生の代表作でもある「新宿鮫」。人気が出るだけのことはあります。本格とは全く方向性が異なりますが、娯楽として読むにはもってこいです。
この作品を手に取ったのがきっかけで、大沢ワールドにはまりました。