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ハーセスさん生誕95年記念

シカゴ響の金管アンサンブル

全面改訂2001.6.25,2016.7.25+26

2016年6月、永年探していた「SYMPHONY IN BRASS」というアルバムを入手し、シカゴ響を冠した金管アンサンブルの商用アルバムは完収!と喜んだのもつかの間、現物を手にして新たな謎が。しかし、ともかく一区切りということで、以前の記述を大幅に見直し改定することにしました。

 前段で商用アルバムは完収と書きましたが、雑誌パイパーズの記事によれば45回転レコードの録音があるとの情報もあります。ただし、これは痕跡すらつかめず、実態は全くわかりません。

 さて、シカゴ響金管アンサンブルの活動は楽器メーカー「ホルトン」とのタイアップから始まったとされています。創設時のメンバーはTp:R.シルキー氏とA.ハーセス氏,Hr:H.コーデン氏,Tb:F.クリサフリ氏,Tba:A.ジェイコブス氏。当時、アメリカでは屈指の金管アンサンブルだったろうと思います。そのあと、シカゴ・シンフォニー・ブラス・アンサンブルと言う名称になって活動を続けます。これはオケのシーズンが長くなってしまったために、ホルトン・インスツルメンツ社のためのツアーが不可能になってしまったからです。なお、この時のメンバーで聴ける録音が「CONCERT IN BRASS」。audiophile社より既に数点発売されていたシカゴ響木管アンサンブルと同じシリーズを思わせるジャケットデザインで、1955年に発売されたようです。このアルバムは1970年代前半に同レーベルから復刻されます。復刻盤のジャケットは白地にアルバムタイトルだけのシンプルなものです。またレコード本体もオリジナルは赤色ですが、復刻盤はオーソドックスに黒です。

 次に来るのが1950年代後半発売と思われる「SYMPHONY IN BRASS」、と思いきや、このアルバム、奏者の情報がほとんどなく、手掛かりはジャケット裏の写真のみ。チューバのジェイコブス氏とホルンのファーカス氏はまず間違いないと思われますが、他の奏者が特定できません。シルキー氏は指揮者としてクレジットされています。現物を見るまでは、「CONCERT-」がクインテットに対し、「SYMPHONY-」はオケのセクションに近い編成での録音かと思っていました。実際に編成は写真で見る限りtp3-Hr2-Tb3-Tba1+打楽器2です。tbのうち1本はバストロかもしれません。また、3人並んだトランペットの一番奥は違う楽器にも見えます。そして収録されている3曲の演奏は、セントルイス・ブルースがフルメンバー,組曲がフルメンバーからホルンを1本にした8重奏+打楽器2,クインテットは文字通り一般的な金管5重奏と思われます。致命的なのが、トランペット奏者を一人も確定できないこと。トップがハーセスさんかどうかわからない。もしこれが発売されたと思われる1950年代後半としたら、ハーセスさんでは無いように感じます。しかし、シルキー氏にひげがなかったり、トロンボーンのトップが若きクリサフリ氏だとすれば、実は「CONCERT-」より前に録音されたものでは?などと想像してしまいます。

 単体ではありませんが、ジェイコブス氏追悼アルバムで、57年の録音がいくつか聴けます。クインテットの編成は、HrがW.ベイリントン氏(当時の3rd)の名前になっています。更にシルキー氏の引退やクレベンジャー氏が66年にHrの首席になるとメンバーが変わります。Tp:A.ハーセスさんは同じで、2ndにV.チコビッツ氏,Hr:D.クレベンジャー氏,Tb:F.クリサフリ氏に加え現在も首席のJ.フリードマン氏,TbaはもちろんA.ジェイコブス氏。

 このあと、68年に例の3大オケ(シカゴ響・フィラデルフィア管・クリーブランド管)セッションに至ります。なお、このセッションは上記6人以外に当時の3rdTbのG.ダドソン氏が2曲だけユーフォニアムで参加しています。

 更に前述のメンバーが主軸と思われるガブリエリの録音が2曲、from the archives Vol.9「a tribute to Carlo Maria Giulini」に収められています。1978年の録音です。また、同録音の編集前と思われる音源がブートレッグで販売されたことがあります。おそらく当時のFM放送を録音したものでしょう。

 ここまでがハーセス氏率いる由緒正しい(笑)シカゴ響金管アンサンブルの録音、と言いたかったのですが、「SYMPHONY-」については保留となってしまいました。

 純粋に近い(ゲスト奏者が数名参加している)シカゴ響金管アンサンブルのアルバムとしてはCSO自主レーベル・リザウンドシリーズから「Chicago Symphony Orchestra Brass live」が発売されています。残念ながら私には、目をつぶって聴いて、「お、シカゴ響!」を彷彿する特徴は感じられませんが、最上級の演奏であることは間違いありません。

 これら以外にも金管アンサンブルとして、「Symphony Brass of Chicago」という演奏団体名で「CHRISMAS」というタイトルのアルバムがあります。純正のシカゴ響チームではありませんが、フリードマン氏,バーノン氏,マッケヒー氏,ポコーニー氏とクレベンジャー氏の奥様(アリス女史)が参加しています。そして、なんと「Holiday Cheer with Symphony Brass of Chicago」というタイトルで、内容は全く同じアルバムがありました。(これはもう詐欺では。。。笑)

 同族楽器のアンサンブルでは、ローブラス・オケスタの古典「THE CHICAGO SYMPHONY TROMBONE & TUBA SECTIONS play concert works and orchestral excerpts from WAGNER BERLIOZ MAHLER and more」があります。当初はオケスタのアルバム自体がとても珍しかったので、この録音の果たした役割はとても大きかったと想像します。それにホルンアンサンブル「HORN QUARTETS"AN OMNIBUS"MENBERS OF CHICAGO SYMPHONY」、もあります。クレベンジャー氏が入団する前の録音。そして、発売は最近ですが、録音は1967年のトロンボーンセクションのアンサンブルが2点。「The Chicago symphony Orchestra Trombones」のvol.1と2。更に異色なところではデュークエリントンのトリビュート・アルバムの紹介にシカゴ響の金管奏者たちとあります。実際に参加しているのはハグストローム氏,マッケヒー氏,バーノン氏の3人で他に木管からコムス氏とB.レーン氏です。

  

 映像。ハーセスさん在団50年を機に企画されたコンサートの模様で、アルプス交響曲とガブリエリの2タイトル。なんと後者にはハーセスさんがプレーヤーとして参加。アンサンブルを演奏する、おそらくは唯一の商用の映像。

​更にシカゴ響のレギュラーコンサートでは、このところ毎年のようにブラスセクションのステージが企画されています。これらも映像やリザウンドで流通させてほしいものです。

​ 以上、シカゴ響の金管アンサンブル紹介改訂版でした。

「Concert in Brass」 audiophile  AP-21 1954年

​ハーセス,シルキー,コーデン,クリサフリ,ジェイコブス各氏による黄金のクインテット

「Symphony in Brass」 audiophile  AP-32 1950年代後半?

​演奏者クレジットなし。シルキー氏が指揮。謎多し。

「PORTRAIT of an ARTIST」,「LEGACY of an ARTIST」 summit 267,DCD469  

ブクステフーデ・ガブリエリ1973年,ボザ・エワルド・ハイネス1966,ベートーベン1954年

​ジェイコブス氏追悼アルバムに収録。記録がきちんとしていて資料性も高い。

「GABRIELI」 sony MHK62353 1969年

​説明不要の歴史的アルバム。sony classicalのmasterworksで復刻されたCDは音質も良いし、オリジナルジャケットを再現していて、各曲の人員配置も載っています。

ブート盤  Harvest Classics HC06014 1978年

​正規版として、「A tribute to Carlo Maria Giulini」がfrom the archives vol.9としてリリースされています。(詳細は拙サイト別ページにあり)ブート盤は正規に比べて音質は悪いが、無修正でより生々しい。

「CHICAGO SYMPHONY ORCHESTRA BRASS LIVE」csor 901 1103 2011年

​ブックレットに詳細な録音データが載っています。録音も演奏も極上。ですがバド,ジェイクの音が聴こえずクレベンジャー氏の咆哮も感じられないと、、、

「CHRISTMAS」「Holiday Cheer」 VOX 7501,EXCELSIOR EXL-2-5400 1994年

​見た目は異なるアルバムですが、内容は同じ!低音系がほぼシカゴ響のメンバー。

「Concert Works and Orchestral Excerpts」  1971年

​ローブラスセクション・オケスタの先駆け的録音でしょう。2002年にCDで復刻されましたが、レコード番号がありません。

「HORN QUARTETS AN OMNIBUS」 CONCERT DISC CS-243  1960年代前半?

参加メンバーは5人で、シカゴ響のレギュラーは2名、あとはリリックオペラやシカゴ教でsoloを吹いたことのある奏者。C.LAUBA氏のシカゴ響首席期間が1960~62年なので、この間の録音と推測。

​なお、上記番号はステレオ録音だが、モノラル仕様のM-1243もある。

「The Chicago Symphony Orchestra Trombones vol.1,2」  1967年

​フリードマン,ダドソン,クリサフリ,クラインヘイマー各氏による至宝のアンサンブル。これも歴史的資料と言えるでしょう。

「TRIBUTE TO ELLINGTON」 TELDEC 3984-25252-2  1999年

シカゴ響の金管奏者たち(も参加している)のアルバムとして紹介。

​まったく話題になりませんでしたが、なかなかどうして、いい演奏だと思います。

「The Chicago Symphony Brass」  2001年

​ガブリエリの子らは、おそらく唯一のハーセスさんのブラスアンサンブルの公式商用画像。残念ながら映像・音質とも今一つ。

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