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トランペット奏者列伝    2016.07.23

稲垣路子

 ガラコンサートにてハイドンの協奏曲を聴いてきました。このコーナーに加えさせていただきたいと確信しましたので、コンサートレポートと合わせて紹介させていただきます。

 稲垣さんのハイドンを生で聞くのは2回目。前回は東京で管打コンと朝日をW受賞した後の記念コンサートでした。そのときもはつらつとした良い鳴りっぷりでしたが、今回は更に細部に気の行き届いた素晴らしい演奏でした。

コンチェルト・ガラ・コンサート 2016.7.18 刈谷市総合文化センター アイリス 小ホール

 1部はモーツァルトの交響曲第40番を1楽章だけやったあと、チェロ協奏曲。弦は門外漢ですが、ちょっと子供が大人ぶった感じが気になる演奏と思ったら、なんと奏者は高校生。そういう意味では印象そのまんまなわけですが、高校生でここまで弾いてしまうなんて本当にすごいと思いました。
 2部はモーツァルトの2,3楽章のあとにいよいよハイドンのtp協奏曲。
オケはチェロが手前のオーソドックスな配置で、上手奥にティンパニ、その前がトランペット(B♭ロータリー)中央に木管で下手側にホルン。稲垣さんの楽器はE♭のロータリー。YAMAHAなのかな。
 最初のオブリガードから楽譜通り。素晴らしかったのは音の立ち上がり。タンギングに頼らない発音は少し前に聴いたバボラク氏と同じアプローチ。トリルも下からで統一。ビブラートを抑えた、音で勝負の聴き応えある演奏でした。特に2楽章、山場ではゾクッとするほど美しくのびやかで部分的には、もう満点!
3楽章もメカニカルに走らない、ブラスアンサンブル・ロゼと共通した歌い方に拍手。終わりもきちんと楽譜通り。おしむらくは、フレーズの終わりの音、特にGがやや下がり気味になるなど、少々隙を感じました。
全体的には期待通りの素晴らしい演奏でした。

 演奏以外で気になったのが、つば抜きの音。一番前に座ったので、間奏中につばを抜いていると、その音が結構大きく聞こえてきました。過去、あまり経験のない雑音だったので、少し気を使った方が良いかもしれないと感じました。もっとも最前列だから気になっただけで、少し後ろに座れば関係なかったかもしれません。それと、楽章と楽章の合間ごとにすべての抜差管を抜いてつば抜きをしていたこと。個人的には面白かったけど、隣の人はちょっと長く感じていたみたいでした。

 そして観客。近くの子供が、演奏中でもお構いなしでせきをし、ティンパに合わせて床で足踏みをするのには閉口しましたが、終演後の盛大な拍手が、指揮者がアンコールはない、というゼスチャーをするまで収まらなかったのは良い演奏会だった証拠でしょう。(ちなみに、何度かのカーテンコールのあと、指揮者がコンマスにアンコールは?と問いかけ、用意してない、と断られた感じでした)4楽章がアンコールという仕掛けじゃないのか、と突っ込んだのは私だけではないと思う(笑)。

 モーツァルトが3楽章で終わりという不思議なコンサートでしたが、チケット完売(当日券なし)でほぼ満席の盛況な演奏会でした。(了)

略歴(ブラスアンサンブル・ロゼのwebサイトより転載)

愛知県名古屋市出身。
愛知県立芸術大学音楽学部器楽科卒業。
桑原賞受賞。卒業演奏会、ヤマハ新人演奏会出演。
2008年、第25回日本管打楽器コンクールトランペット部門第1位。
2009年、第78回日本音楽コンクールトランペット部門第1位。岩谷賞、E.ナカミチ賞受賞。
2010年、リサイタル開催。
2011年、NHK-FM「名曲リサイタル」出演。
これまでにソリストとして、日本フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、セントラル愛知交響楽団、中部フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団などと共演。
トランペットを竹本義明、津堅直弘、武内安幸の各氏に師事。
大阪音楽大学、滋賀県立石山高等学校音楽科非常勤講師。
日本(旧大阪)センチュリー交響楽団を経て、現在京都市交響楽団団員。

http://brassrose5.com/profile/inagaki.html

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